障害者手帳について
皆さんご存知ですか? 障害者手帳には、3つの種類があるんです。
【障害者手帳】と一口に言っても実は複数種類存在していて、障害のある人が取得できる手帳の総称となります。
障害者手帳には、「身体障害者手帳」「精神障害者福祉保健手帳」「療育手帳(愛の手帳)」の3つの種類があります。
それでは、それぞれの手帳について説明していきましょう。
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【身体障害者手帳】
身体障害者手帳とは、身体障害者福祉法(https://hourei.net/law/324AC1000000283)に基づいて制定された制度で、身体に障害のある方の自立や社会活動の参加を促し、支援を目的とした作られた手帳になります。
また、国が医療費助成制度の対象としている 「指定難病」のある人も、疾患の症状と医師の診断により障害者手帳の取得ができる可能性があります。
【精神障害者福祉保健手帳】
精神障害者手帳とは、精神保健福祉法(https://hourei.net/law/325AC1000000123)に基づいて制定された制度で、精神障害のある方の自立や社会活動の参加促進と支援を目的として作られた手帳になります。
精神疾患により、長期に渡って日常生活や社会生活への制約がある方を交付対象としています。
なお、発達障害に関しても精神障害者保健福祉手帳の交付対象となっています。
【療育手帳(愛の手帳)】
療育手帳とは、知的障害のある方に対して一貫した指導・相談を行い、各種の援助措置を受け易くする事を目的とした作られた手帳です。
療育手帳制度は法律で定められた制度ではなく、都道府県・政令指定都市が、児童相談所または知的障害者更生相談所における判定結果に基づいて手帳の交付を決定しています。
その為に自治体によって制度名(例えば、東京都や横浜市では愛の手帳。埼玉県やさいたま市ではみどりの手帳と呼ばれています。)や支援内容、手帳取得の基準などが異なる場合がありますので予め所轄官庁へ確認するようにしましょう。
障害者手帳の対象疾患と等級について
障害者手帳の種類ごとに、対象疾患と等級が定められています。
身体障害者手帳の対象疾患と等級
身体障害者福祉法(厚生労働省)に定める身体上の障害がある方に対して交付される手帳です。
対象の障害は下記に記載する9つが該当します。
また、これらの障害は程度や日常生活に及ぼす影響により7段階の障害程度等級に分けられています。
7級にあたる障害は単独では手帳の対象となりませんが、7級の障害が異なる部位に重複するような場合には6級(相当)として手帳が発行されます。
身体障害者手帳の等級が1級や2級の場合には、重度の障害とみなされます。
3級の場合でも、内部障害の場合は重度の障害と扱われる場合もあります。
また、いずれの障害についても永続する事(障害が固定されており、身体の機能が回復する可能性が極めて低い又は可能性が無い状態にある事)が条件となります。
・視覚障害
・聴覚または平衡機能の障害
・音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害
・肢体不自由
・心臓、じん臓または呼吸器の機能の障害
・ぼうこうまたは直腸の機能の障害
・小腸の機能の障害
・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
・肝臓の機能の障害
精神障害者福祉保健手帳の対象疾患と等級
精神障害者手帳の交付対象の疾患としては、何らかの精神疾患(てんかんや発達障害などを含む)により、長期に渡り日常生活や社会生活への制約がある方を対象としています。
生活への影響の程度により1級から3級の等級に分けられます。
また手帳を受ける為には、その精神疾患による初診から6ヶ月以上経過していることが必要な条件になっています。
・統合失調症
・うつ、双極性障害(躁うつ病)などの気分障害
・てんかん
・薬物やアルコールによる急性中毒またはその依存症
・高次脳機能障害
・発達障害(自閉スペクトラム障害(ASD)、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD・ADD)等)
・その他の精神疾患(ストレス関連障害等)
療育手帳(愛の手帳)の対象疾患と等級
療育手帳とは各自治体の独自制度になる為、判定区分は自治体によって区分の呼び名や判定基準に若干の違いが見受けられるようです。各自治体の基準により、障害の程度が重度なら「A」、その他は「B」に区分されています。
例えば、東京都では障害の程度によって1度から4度に区分され、「愛の手帳」という名称です。
身体障害者手帳の有効期限
身体障害者手帳には有効期限はありません。
障害の状態が変わったり、障害が回復した場合には、「等級変更」や「返還」の手続きをする必要が発生します。
有効期限はありませんが、再認定制度の対象になっている方は、指定された期日までに改めて診断・診査 を受ける必要があります。
再認定については、次の項目で紹介していきます。
「障害再認定」
手帳が交付される際に、将来において障害の程度に変化が予想される場合は都道府県知事が再認定の期日を指定し、その期日までに障害程度を改めて診査する制度の事を言います。
診査の結果、障害程度に重大な変化が認められた場合には、先に交付した手帳と引換えに、新しい手帳を交付する事になります。
東京都では障害再認定制度を平成14年度から実施しているようです。
障害者手帳を持つメリット(支援サービス・優遇、割引制度)
ここからは、不本意ながらも障害を負ってしまい障害者(障碍者)手帳を取得してしまっても、それを前向きに捉えて頂きたくて敢えてメリットを書いていきたいと思います。
(私も数年前に障がい者となってしまいましたが、利用させて頂ける制度なら色々な恩恵を有り難く利用させて頂き、楽しく過ごしていきたいと思っています。)
障害者手帳取得のメリットは手帳の保有・提示により様々な支援や優遇制度が受けられる事です。
以下に詳しくご紹介していきたいと思います。
(私が個人的に調べた範囲ですので、間違いや漏れがあるかと思いますが、ご容赦下さい。)
身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳で受けられるサービス
障害の種別や等級、所轄の自治体や皆さまの所得状況などによって内容は変わってしまう事がありますので注意が必要になります。
医療費の助成
医療費の助成とは、障害者手帳をお持ちの方の医療費負担が軽減される制度です。
一例として、東京都内在住の方で下記に該当する方は、医療機関での医療費の自己負担が、原則1割となります。
(1)身体障害者手帳1級・2級の方
(心臓・じん臓・呼吸器・ぼうこう・直腸・小腸・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫・肝臓機能障害の内部障害については3級も含む。)
(2)愛の手帳1度・2度の方
(3)精神障害者保健福祉手帳1級の方
引用:東京都福祉保健局「心身障害者医療費助成制度(マル障)」
※医療費の助成については地方自治体ごとに制度の名称や内容が異なります。
詳しくお調べになられる際は、例えば検索サイトなどで「障害者医療費助成 〇〇市」のようにお住まいの市区町村を含めた検索をお試し頂くか、都道府県や市区町村の福祉担当窓口にお問合せ下さい。
補装具の助成
補装具とは、義肢・盲人安全つえ・補聴器・車いすや患部位に装着する装具などを指し、補装具の購入や修理で必要な費用の助成が受けられる制度を言います。
対象となる補装具の種類や助成可能な上限の価格、個数などについては細かい条件がある為、申請を検討されている方は、かかりつけの主治医に相談されるか、厚生労働省『義肢等補装具費支給要綱』をご確認下さい。
障害者住宅改造費(リフォーム費用)の助成
住宅リフォーム費用の給付が受けられます。
例えば、住宅内の段差解消のバリアフリー工事やスロープ・手すりの設置費用を助成する制度です。
各種納税の軽減
所得税・住民税・相続税・自動車税などの軽減が受けられます。
等級によって変わりますが、一定の金額の所得控除が受けられます。
参考:国税庁『障害者と税』
療育手帳で受けられるサービス
療育手帳をお持ちの方は、前述した支援や優遇、割引制度に該当する場合が多いですが、諸条件は自治体によって大きく異なる為、お住まいの自治体に確認して下さい。
【障害者手帳と障害年金】
障害者手帳と障害年金
どちらの制度も障害のある方の為の制度であり、どちらにも同じ様な等級が存在する為よく誤解されてしまっているのですが、両者は全く異なる制度になります。
障害者手帳を取得せずに障害年金を受給されているケースもありますが、障害者手帳を持っていれば必ず障害年金支給の対象となるとは限りませんのでご注意下さい。
障害者等級と障害年金の等級もイコールではありません。
具体的に言うと「障害者等級が1級なので障害年金も1級となる」という事ではなく、 また「障害者等級が4級だから障害年金は貰えない」とは限らないという事です。
申請などの際には、それぞれ別の制度ですので専門の機関(社会保険事務所)に相談してみて下さいね。
障害者雇用枠での就労
従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者や知的障害者、精神障害者の雇用の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。
例えば、民間企業の場合だと従業員を43.5人以上雇用している企業は、障害者を1人以上かつ、従業員の2.3%にあたる人数の障害者を雇用する事が法律で定められています。
障害者手帳をお持ちの方は、この法定雇用率で定められる枠での就業が可能となります。
なお、障害者手帳を持っていても障害者枠で就業することは義務ではなく、一般枠で就業することでも何ら問題はありません。
各企業ごとに「求人への応募段階で手帳を取得済み必須」か「申請中(取得見込み)でも応募可能」かは異なりますので、手帳の申請中に企業への求人応募を検討されている方は、応募したい企業への事前確認が必要となります。
障害者雇用枠で働くメリットとデメリット
障害者雇用枠で働くメリットとしては全ての障害者手帳に共通しますが、障害者雇用枠に応募し就職・転職することが可能です。
障害者雇用枠として就職や転職した場合には、障害をオープンにして必要な障害配慮を受けられる事が大きなメリットとなります。
それでは逆に障害者手帳を持つ事で発生するデメリットについて説明したいと思います。
障害者手帳を持つ事で発生するデメリット障害者手帳を持つ事についてのデメリットですが、基本的には無いと考えて問題ありません。前述の転職活動に関しても、障害者手帳を持っている事を企業側に開示する必要は義務ではありませんので、一般枠・障害者枠を自由に選択することが可能だからです。
敢えてデメリットをあげるとすれば、「周囲の人達に自分は何らかの障害を負っている」という事を知らしめてしまう可能性があるという点ですね。
障害者手帳の更新各種の手帳には有効期限が存在する場合がありますので、更新する事を忘れないように注意することが大切です。
身体障害者手帳の場合は障害の部位、程度に応じて更新が必要になる場合があります。
また、療育手帳は年齢に応じて再判定が必要になる事がありますし、精神障害者福祉手帳には2年に1度の更新が必要となります。 必ずお住まいの地方自治体で確認して下さい。
障害者手帳の申請方法
ここからは、障害者手帳の申請方法についてご紹介していきます。
申請については、お住いの地方自治体へ提出する事になります。
診断書は、お住まいの各自治体による規定のフォーマットを確認して下さい。
私の場合は特に指定フォーマットは無く、かかりつけ医の診断書で問題ありませんでした。
身体障害者手帳の申請方法
身体障害者手帳を取得する際は、指定医の診断書が必要となります。
診断結果が下りるまで初診から一定の期間を要する場合がありますので、取得を検討している方は早めにかかりつけの医師への相談をお勧めします。
下記にて申請に際しての主な流れを説明していきます。
簡単な流れ
- お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口にて、診断書(もしくは意見書)の書式を受取る(2)医師に診断書を書いてもらう(医療機関によりますが 5,000円程度必要になります)
- 診断書を(1)の窓口へ提出し、必要な書類もあわせて提出する
- 手帳が交付される(交付されるまでの期間ですが、市区町村によって異なります。通常一ヶ月程度が多いと聞きますが、私の場合は行政の書類の管理不備(紛失した)で2ヶ月以上かかってしまいました。)
精神障害者福祉保健手帳の申請方法
精神障害者保健福祉手帳を取得する場合も指定医の診断書が必要な点を始め、主な流れは前述の身体障害者手帳と同様となります。
異なる点としては、初診から6か月を経過しないと申請が出来ないので注意が必要です。
療育手帳の申請方法
療育手帳を取得する際は、主に下記の流れで申請手続きを進めます。
簡単な流れ
- お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口、もしくは児童相談所で障害の程度判定の予約を申し込む
- 心理判定員や、小児科医による面接、聞き取りが実施される
- 判定結果に基づいて、精神保健福祉センターで審査が行われ区分が決定される
- 手帳が交付される
まとめ
障害者手帳の申請や取得など複雑に思えてしまう障害者手帳の制度ですが、取得する事によって得られる支援・サービスは実に数多く幅広く存在しています。
取得を検討されている場合には、まずは主治医やお近くの自治体に相談してみましょう。
近年、法定雇用率の割合の引上げに伴って障害者の方々の雇用数が年々増えている背景があります。
これらは就職や転職を考えている人にとってはチャンスとなっており、障害者手帳の取得によって就職先の可能性が広げられます。